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kage

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どうしてテレビが悪いのか

kage

2018/07/24 (Tue)

リュウくんのこと、長文でしたが読んでいただけましたか?

私の臨床の流れみたいなのを一度書いてみようと思っていました。


実際に書いてみるといろいろなテーマが入り込んで何を言いたかったの?と思われた
かもしれません。

子どもさんとの関係づくり、保護者との関係づくり、
子どもさんの症状の診方、

治療の実際(コミュニケーションの治療、音声や構音の治療、情緒の問題への対応・・・)
保護者への指導等等・・・


でも、やっぱり一番言いたかったことは、テレビのことです。
というか、そもそもこのブログを始めたきっかけもここにあります。

小さいころの長時間視聴が、いかに子どもの発達を抑制し、ゆがめていくのか、
それをやめれば、劇的に子どもが変わる、ということ。

リュウくんの場合はテレビをやめたからってすぐに話せるようになったわけではありません。

しかし、訓練前の数か月間、お母さんがテレビ無しで頑張ってくださったおかげで
その後の訓練がスムーズに進み、大きな効果を得ることができたと思っています。


リュウくんの変化のことで、そんなにどんどん発達が進むはずがないと思われる方も
多いと思います。

まずは、下記のホームページにアクセスしてみませんか?
リュウくんとよく似た子どもたちの動画が提供されています。



Kids21子育て研究所






次回からはどうしてテレビ(電子メディア)視聴が小さい子どもさんに良くない影響を及ぼすのか
科学的なエヴィデンス(証拠)を示しながらお話したいと思います。








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リュウくんのこと ( 完結編 )

kage

2018/07/03 (Tue)

最近は文章を練る暇がなく、思ったままに書いて、長文になっています。

さて今日は終わることができるかな?リュウくんの話。

3歳半になろうとする春、リュウくんは幼稚園に入園。
普通の幼稚園をご両親が選ばれたことに、私は驚きを隠しえなかったのですが、
リュウくんは意外と平気で、というよりも喜んで幼稚園に通い始めました。

今時、英語や体操の教室などもなく、行事ごとも派手ではない幼稚園はいつも定員割れらしく
他の園では入園を断られてしまうかもしれないリュウくんを快く受け入れて下さいました。

箸の使い方やらトイレットトレーニングといった身辺自立から、丁寧に指導してもらい、
激しかった偏食も先生方の導きで少しずつ改善しました。

歌やお遊戯も覚え、仲の良いお友だちの名前も教えてくれるようになりました。

1年経つ頃には小さくて弱々しかったリュウくんが、日焼けし、逞しくしっかりした体形になって、
まだ、年齢相応の長い文は表出できませんが、質問に答える形では十分な会話ができました。


もちろんなんでもスムーズというわけにはいきません。
対人恐怖を持つリュウくんは行事が苦手で、1年目は参観日や運動会、お遊戯会のたびに、
始まる前から、多くの人がいるというだけで、泣き出してしまいます。

私は、無理やり参加させないようにとアドバイスしました。

 「今から何が起ころうとしているのか、先生のことばだけでは理解できないのです。」

お母さんはリュウくんを抱き、会場の隅で見学させることにし、
年中さんになるころには月に一回の参観日はもう平気、席に座っていつも通りの様子をお母さんに
見せることができるようになり、10月の運動会へ向けての練習にも一生懸命取り組んでいるとの話、

それを聞いたおじいちゃんは大喜び、運動会に参加出来たら玩具を買ってあげるといったそうです。

(イヤイヤ、リュウくんはご褒美なんてなくても運動会に出たくてたまらないのですよ。)

私はお母さんに用意してもらった前年の運動会の写真をリュウくんに見せながら、

 「リュウくん、運動会出るの?」「ウンドウカイ、デル!」
 「でもさあ、こんなに人が来るんだよ。知らない人もいっぱいだよ。」「イッパイ・・・」

と言ってリュウくんは両手をグッと握りしめました。
(出たいけれど、ドキドキするんだよね・・・)

 「お母さん、練習が上手にできても、本番では先生が付いて下さるようお願いしてください。」

運動会当日、リュウくんは、先生に手を引かれて入場し、
始めの体操の時は泣きそうな顔でしばらく空を見上げ、その後は下を向いたまま、
でも定位置から離れることなく、かけっこは先生に抱っこされて参加、
ダンスの時も先生が一緒に動いてくれて、なんとか自分の場所に立っていることができました。

12月の発表会の時も、舞台の隅のカーテンに隠れた場所で顔を背けながらも
その場所から離れなかったそうです。   少し残念そうにするお母さんに私は
 
 「去年に比べたら大きな進歩でないですか?来年はきっと大丈夫。」

そして年長組になったリュウくん、
エコラリア(オウム返し)もほぼ消失、お友だちとの遊びのこと、お母さんが作る料理のこと、
お父さんとのお出かけのこと、いろいろ話してくれるようになりました。

いよいよ秋の運動会、
例によって写真を見ながら「リュウくん出るの?」「デルヨ」の会話の後、私は続けました。

 「人がいっぱいいるからね、出てもドキドキして何にもできないかもね。」「デキル!」
 「でも、前もできなかったし・・・」 と言いかけた時、リュウくん、思わず大きな声で
 「デキル~!」と叫んでしまいました。そして目にはいっぱいの涙、

でも、立ち上がることもせず、お母さんに助けを求めるわけでもなく、
歯を食いしばって私をにらみつけています。

リュウくん、私と喧嘩しているんだ!

自分の思いが何なのかさえもはっきりしない混沌の中にいたリュウくんとは大違い、
怯えたり叫んだりするだけで、何も伝えることができなかったリュウくんが・・・
3年の間にこんなに成長して、自分の決意を必死で伝えています。

運動会当日はどこにいるのかさえ分からないほどリュウくんは完璧に参加し、
終わったときの晴れ晴れとした表情を見てご両親もおじいちゃんも涙が止まらなかったそうです。

お遊戯会では年長さんは劇をしますが、王様の役に立候補し、セリフもちゃんと言えたそうです。


私のところの訓練が始まる前にリュウくんは重度の知的障害を伴う自閉症と
診断されていましたが、年長の春の知能検査では正常範囲と判定されていました。
ひらがなの読み書きや数の理解も進み、集団行動も立派に取れます。

しかし、例えばなぞなぞなどは苦手だし、ことばの裏の意味はまだ理解しにくいし、
先生の指示が長いと理解できないで他児の行動を見ながら動くということです。

そんなことも考慮してご両親は入学先として公立小学校の特別支援学級を選ばれました。
私は例によってノーコメントでしたが、内心はよい選択をされたなと思いました。

訓練最後の日はご両親が付き添って見えました。

 「リュウくん、学校楽しみ?」「ウン、タノシミ。ボクネ、イッパイベンキョウスル。」
 「そう、でも、勉強、いやって泣くかもね。」
 「ナカナイヨ、モウ、rainwoman センセイ、イジワル~」

私はご両親に今後のことを説明した後、お礼を言いました。

 「長いこと来ていただき、本当に感謝しています。」
 「いやっ、お礼を言うのは私どもの方で、先生、なんでそんなことをおっしゃるんですか?」

 「私は無理難題いっぱいお母さんに投げかけましたが、私のことを信じてくださいました。
  子どものために自分たちの生活を変えることはできないとおっしゃる方も多くて、
  最近、少しまいっていました。でもリュウくんとご両親のおかげで、
  自分の信念は間違っていなかったと、勇気を持って臨床に向かおうと
  新たなファイトがわいてきました。本当にありがとうございました。」


                                        ― 完 ―

リュウくんのこと ( 5 回 目 )

kage

2018/06/19 (Tue)

講演やらなにやらで気ぜわしくまた、記事の更新が途絶えていました。

さて、リュウくんの話の続きです。
ことばを発したいけれどなかなか音を作り出せないリュウくん。

私はカルテをめくり直し、

赤ちゃんだったリュウくんは、テレビの前でおとなしく過ごし、お母さんにとっては
育てやすい子だった、少なくともお母さんがリュウくんの喃語を意識するほど
声を出すことがなかったし、泣くことも笑うことも少なかった、
成長とともにお母さんに伝えたくても何も伝えられないで、癇癪や粗暴行為が始まった・・・

ということを確認し、リュウくんに喃語の時期を通りなおしてもらおうと考えました。

発達には、臨界期というものがあり、3歳を過ぎたリュウくんに1歳前の発達のポイントである
喃語を取り戻してあげられるのか、不安もありましたが、
日本語の音韻への意識が明確化する4歳より幼い段階ではこれしかないと思い、
ことばの練習とは切り離し、音遊びをしました。

私も、そしてお母さんもびっくりしたことにリュウくんは発声発語器官の運動はとても器用で、
いろいろな音をすぐにまねして出してくれました。

ことばとなると全くうまく発音できないのに・・・

私の口元にリュウくんの注意が行き過ぎないように、
動作を入れたり、物を使ったりしながら、楽しく、
でも、リュウくんが興奮しすぎないように穏やかに・・・

そして前々回書いた指差しの練習(実質、指差し+復唱)を並行して実施しました。

リュウくんは音遊びで舌打ちができると復唱の中でも[タ行音]が出だす、
咳払いができると[カ行音]が出だす、というように
獲得した音をことばの中で使えるようになっていきました。

太鼓は初めは『アーオ』それから『ターオ』そして『タアコ』ついに『タイコ』というように
徐々にことばの中でも上手にまねできる音が増えてきました。

これぞ私が狙っていたこと、幼い子はこの言葉はこう発音してなんて意識しないで
自然に聞いたことばが口から出てくるのです。

私は指差しの時はターゲットの音を意識させるような言い方はぜず、
あくまでも自然の高さ、自然の速さの声で「たいこ」とさらりと言い、彼の指差しを確認するだけで
彼が声を出そうが出すまいが無関心を装っています。

上手に言えても、もちろん私は「上手ね~」なんてほめことばは使いません。
それは発話に対する緊張を誘発するだけだからです。

もちろんお母さんもことばが上手に言えても褒めません。

そして訓練開始から半年、ほぼ、すべての音韻を正しく構音し、
絵本を指差しながら物の名前を自分で言うことができるようになりました。
会話も少しずつ成立するようになりました。

でもまだ、二語文がやっとといった感じです。エコラリア(いわゆるオウム返し)もあります。

そんなとき、ご両親は年少になるリュウくんのために普通の幼稚園を選ばれました。

 「えっ?療育センターの通園施設に行かれるのではないのですか?
  (確か療育センターの発達検査の時そう勧められたと聞いていた)」と心配する私に

お母さんは、

 「なんか違うと思ったんです。どうしてこの子はしゃべらないんですかと聞いたとき、
  自閉症だから仕方がないといわれました。生まれつきなんだからお母さんのせいではないと、
  今まで大変でしたねって同情までされて・・・でも・・・

  rainwoman先生はことばが出るように最善を尽くしますと言ってくださったし、
  私にはテレビを消して穏やかで規則正しい生活をと
  私がするべきことを明確にアドバイスしてくださいました。
  そして、リュウはここまで成長しました。

  私たちはrainwoman先生の考えに似た理念を持った園にリュウを通わせたいのです。」

(そっかー、私のせいかー、大丈夫かな?)

園や学校選びは、私は口出しをしないことにしています。
集団の中の子どもの様子は私には見えないし、
受け入れ先に私がいるわけでもないので、無責任にどこが良いなんて言えません。


聞けば、一学年20人未満で、英会話も体育教室も無いとのこと、
テレビも一切見せず子どもたちが穏やかであるということ・・・( いいかもね )

まだ対人恐怖があって、知らない人から声をかけられると思わず奇声が出てしまったり、
泣いてしまったりすることがあるリュウくんですが、園に見学に行ったときは
お母さんのお尻に隠れてはいたものの終始ニコニコしていたとのこと。

 「リュウくん、幼稚園行くの?」   「イクノ」
 「楽しみ?」    「タノシミ」
 「幼稚園で泣くかもねぇ?」    「ナクカモ??? ナカナイ!」

rainwomanの意地悪な質問にうっかりエコラリアになりそうでしたが、
ここはきっぱり泣かないと宣言したりゅうくんでした。


                             ― 続  く ー







リュウくんのこと ( 4回目 )

kage

2018/05/13 (Sun)

さて、重度の知的障害を伴う自閉症スペクトラムと診断されていたリュウくんですが、

お母さんが部屋の外に出ても落ち着いて座って遊んだり、
私が持っているものが欲しいときには私の顔を見ながら掌を差し出したり、
自分が触りたい玩具を指差しで教えてくれたり、

と、できることが増えていきました。

また、前回記事で書いたように、お母さんがことばを教えようとするのをやめて下さってからは
相手が言うのを、真似して声を出そうとするようになってきました。

「しまうま」は[マンマ―]
「うま」は「・マー」
「らいおん」は[アーオン]
「さる」は[ウー]

というように・・・


でも、なんか違う、幼い子の未熟な構音とは明らかに違う・・・・

そうです。

子音が無いのです。
リュウくんの発語には[m]以外の子音が無いのです。
母音も舌を後方に引いたような音で、自然の発達の中で出てくる構音とは明らかに異なります。

私たち言語聴覚士は、幼い子の未熟な構音には何の治療も施しません。
年齢とともに自然と構音は発達していくし、
幼すぎる子の構音の練習がいかにおおきな弊害があるものかを
私たちは誰よりも知っているからです。

口腔内の異常が無いのに、4歳ぐらいになっても上手に音を作れないとき
それは『機能性構音障害』と診断され、治療の対象となっていきます。

さて、リュウくんは
未熟構音ではなく、でも口腔内には何の異常もなく、
かといって機能性構音障害の訓練をする年齢でもなく
でも本人はことばを上手に言えるようになりたくて声を出す練習をしたがる
何とかしてあげたいな~


そんなある日、いつものファミレスでコーヒーを飲んでいるとき、ふと隣の席を見ると、
声を出す赤ちゃんに一生懸命お返事するおばあちゃん。

[ア~ア~] 「はあい、ばあばって呼んだの?」 赤ちゃんにっこり。
[ア~ア~] 「はあい」    [ア~ア~] 「はあい」

今度は赤ちゃん、ちょっとよだれを飛ばしながら[ブッブッブッー]
おばあちゃんも真似して「ブッブッブッー」
赤ちゃんは、とびっきりの笑顔を見せました。

これだこれだ、リュウくんには喃語(なんご)が無かったんだ!

喃語とはしゃべりだす前の赤ちゃんがいろいろな声を出しておしゃべりの練習をすることです。
それに大人が返事をすることでコミュニケーションの練習にもなります。

テレビの前に置かれたリュウくんは喃語を出すことも少なく、たまに出していたとしても
お母さんは気が付かなかったかもしれません。


それからしばらくは私はリュウくんと音遊びに興じました。

ティッシュペーパーを[ふーっ]と吹いたり、
ほっぺをぷうっと膨らませておいて両の手でポンと叩いて[ブッ]と音を出したり、
ベロを唇の上に出して左右に動かし[レロレロ]したり
[アー]と言いながら口を掌でたたいて音を途切れさせたり、

動物の鳴き声をまねたり、乗り物の音をまねたり、

お母さんにも時々見てもらい、家でも声をたくさん出しながら遊んでもらうようにお願いしました。
くれぐれもことばの練習をしているという意識を持たないように念を押しながら・・・


高くない声で、力みの入っていない声で・・・・自然に、自然に、
興奮させないように穏やかに・・・・

                                


   ―  続   く  ―









リュウくんのこと ( 3 回目 )

kage

2018/04/24 (Tue)

重度の知的障害を伴う自閉症スペクトラム障害と診断されたリュウくんの話の続きです。

知らない人への極端な恐怖心を持っているリュウくんに私は無理に近づこうとはせず、
テレビのごとく、彼の前で勝手に話し、動き、
そして私の存在に警戒心が薄れたところで、物のやり取りの訓練を開始しました。

相手から物をもらう意識が育っていないのに相手の気持ちを受け取ったり、自分の気持ちを
相手に差し出したりはできないからです。

私が持っているものを勝手に取ろうとするリュウくんに私はすぐには渡さず、掌を上にしたら
(それが欲しいというサインを出したら)渡すことから始め、
次に欲しがっているものをわたしの顔の前に持ち上げ、それを見たら掌の上に渡す、
次に、物は上に上げていなくても私の目を見たら、渡す、というように進めていきました。

相手の顔を見て気持ちを表現し、それが伝わると思いが実現することを体験してもらいました。

また、勝手に立とうとするときは肩をそっと抑えて制止し、「どうぞ」と言ってから立たせました。


比較的に早く、私の指差すところを見ることができたので
今度はリュウくん自身が指差すということを教えました。

指差しは多くの自治体の乳幼児健診のチェック項目に入っています。
コミュニケーション発達の指標となる重要な動作だからです。

人は眼前にある自分の関心事を人に伝えようとするときこれを見てというように指をさします。
例えばお母さんが赤ちゃんに「ワンワンよ」と言いながら犬を指差し、見せようとしたり、
また話し始めた赤ちゃんが「ワンワン」と言って犬がいることをお母さんに教えようとします。

指差しをつかさどる運動野下部という脳の部位は言語野と呼ばれる部位のすぐそばに
位置しています。ことばの発信と指差しはこのようにとても密接な関係にあるのです。

私はリュウくんの右手で握りこぶしを作らせ、人差し指を立てさせて、私の左手で保持し、
開いた絵本の上に持っていきました。

私は「りんご」といいながら、右手でりんごの絵を指差し、同時にリュウくんの人差し指でも
りんごの絵を指差させました。
同じように「いちご」「みかん」と言いながらリュウくんの指先もそこに運びました。

意外とリュウくんは抵抗することなく私のなすがままで、数分間、この練習は続きました。

帰り際、いつものようにお母さんにアドバイスをします。
「お母さんは真似しないでくださいね。」

お母さんの目にみるみる涙が溢れました。
「先生と同じように絵を指差して『リ・ン・ゴ』って言って、リュウが声を出すのを
待っていました。」

「ごめんね、お母さん。
お母さんが言葉を教えようとするとリュウくんはますますしゃべらなくなってしまいます。
りんご食べる?とか、絵本を見ているときはここにりんごがあるねとか自然に話しかけてください。
くれぐれも教えようとか、しゃべらせようとかしないでください。」

次の週、ミニカーやパズルで一通り遊んだ後、
「リュウくん、次は何をしようか?好きなの持ってきていいよ。」
と言ってリュウくんを席から立たせるとなんとリュウくん、先週使った絵本を持ってきました。
「りんご」、「いちご」、「みかん」私は、リュウくんの右手を支えている自分の左手を
そっと放してみました。何とリュウくんは、人差し指を立てたままで、指差しを続けました。

おまけに指差しながら何かもやもや声を出しています。

初めての来院の日の泣き声以来、リュウくんの声を聞くことができました。
(お母さん、練習やめてくれたのですね・・・ありがとう。。。。)

そして数週間後、動物の絵本で指差しの練習をしているとき、私が「しまうま」というと
リュウくんも[マンマー]と真似して、しまうまを指差しました。(いったよ~!)

お母さんは、すかさず「リュウ、すごい、しまうま、いえたね~」と大喜び。
さすがに私はそこで水を差すようなことは言えませんでしたが、また帰り際、

「お母さん、これから少しずつことばが出てくると思いますが、もっと上手に言わせようとしたり、
褒めたりしてはいけません。褒めると声を出そうとするときに力んだり、恥ずかしい気持ちに
なったりしますから、自然に、ほんとだ、しまうまがいるね、くらいにしておきましょう。」

いつもいつもお母さんがしていることにケチをつけてしまう私です。
でもお母さんはそれも全部飲み込んでくれました。


どうしてテレビはいけないのか、
どうしてことばは教えてはいけないのか、
どうしてことばを発したことを褒めてはいけないのか、

お母さんを困らせてばかりいる rainwoman ですが、
その説明はまた後日ゆっくりするとしてもう少し、リュウくんの話を続けさせてください。



                                               ― 続  く ー




リュウくんのこと(前回からの続き)

kage

2018/04/03 (Tue)

リュウくんの第一回目の訓練日はリュウくんはお母さんのお膝の上、
警戒心の強い彼と私は目を合わさないようにしてお母さんに問診をしました。

さあ、どんな作戦で彼と仲良くなっていくか・・・

以前の私は重度自閉症の子どもさんが来られると、まずは家具のように存在しようと心に
決めていました。人に対する親和性の薄い子にいきなり近づいたり(いくら姿勢を低くして
いても)、話しかけたり(いくら優しい声でも)しても、すぐにすり抜けられてしまうのです。

だから、私は人ではなく、物として慣れてもらうことから始めていました。

しかしながら、リュウくんは対人的な親和性が薄いというよりむしろ、
対人的な恐怖を持っています。
初回お会いした時に比べ、私の方に随分と視線を送ってくれるようになってはいるのですが。

「私、テレビになってみようかな・・・」

さて、一週間後、やっぱり、リュウくんはお母さんの膝の上、
私は子ども用の机の前に座り、ミニカーを持って「ブッブー」と言いながら動かし始めました。

リュウくんは車に視線を送っています。私は周辺視野で彼の様子を確認します。
人には慣れていないけれど、自分のことを見たり話しかけたりしないテレビには
随分慣れていたわけだし・・・

「リュウくんも遊んできなよ。」とお母さん。
その一言でリュウくん、お母さんにしがみついてしまいました。

私は、リュウくんにもお母さんにも視線を向けないままで、
「お母さんは声を出さないでくださーい。」

「オッと、赤信号だ。キッキー(ブレーキ音のつもり)。」
「あっ、青になった。しゅっぱーつ!」

しばらく続けているうちにリュウくんんはお母さんの膝から降りてこちらを見ています。

「次は、電車にしようかな」
「ガタン ゴトン ガタン ゴトン」

リュウくんは段々私のそばに寄ってきました。そして何も言わず、勝手に私の電車を取って
机の上で走らせました。
私は「ガタン ゴトン ガタン ゴトン」と電車の音を演出しました。

(人との物の受け渡しの意識はまだない・・・)

こうして訓練時間が過ぎ、帰り際にお母さんが言われました。

「リュウが家族以外の人に近づいていくのを初めてみました。ビックリです。」

「私、今日は人ではなかったですから (笑) 」
「えっ?」
「今日は話しかけもしなかったし、視線も向けませんでした。リュウくんが警戒しないようにね。」


次の訓練日にはリュウくんはすんなり近づいて来て私が持っている電車をとろうとしました。

私は電車をギュッと握って離しません。
リュウくんは私に視線を向けることなく、何とかそれをもぎ取ろうとしました。

「電車がいるんだね。」そう言ってリュウくんの掌を上に向けその上に電車を載せました。
物の受け渡しを人としているという意識が無い段階で、ことばのやり取りができるわけが
ありません。やり取りの練習の始まりです。

今日は、乗り物の型はめパズルを出してみました。
電車のピースをこれ要る?と訊きながらリュウくんの掌を上に向け載せました。

リュウくんはそれも走らせようとするので、
「ガタン ゴトン ガタン ゴトン、駅はここでーす。ここに入れてください。」
とピースがはまるくぼみを指差し、そこに導いていきました。

「バスはここに留まりますよー。ブッブー」指差している場所にバスを導いていきます。
「飛行機はここに着陸してください。ビューウン」

何とリュウくん私の指差すところをしっかり見ているではありませんか。

帰りのお母さん、「こんなに集中して遊べるのですね。」

「私の指先を見てくれました。お母さん、テレビを消していてくれたおかげです。
 自閉症の子どもさんはなかなか人の指先を見ることはできないのですよ。」



                               ― 続  く ー








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