FC2ブログ
2016 10 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30. »  2016 12

『 なりたい自分になる 』ということ・4

kage

2016/11/08 (Tue)

何かトラブルがあると大暴れしていたK君は、
『絶対に叱らないぞ作戦』と『一緒に遊ぶと楽しいぞ作戦』を実践していく中で
徐々に落ち着いていきました。

K君は何か困ったことがあったら自分では伝えられないけれど
私には知っていてほしいと思うようになりお母さんを通して自分の失敗を告げるようになりました。

「今日は園で鉛筆で線を書く練習をしていて、手を振り上げた拍子に隣の子の目のあたりに
鉛筆の先が当たって、先生から目に当たったらどうするのって注意されたみたいです。」
とお母さん。

園にも叱ったら逆効果ですよと伝えているけれど、なかなかとっさの時の判断は難しいようです。

私は訓練室でK君をすごろく遊びに誘い、サイコロを振る合間合間にさらりと聞きました。

「やっつけようと思ってやった?」
「いいや。」

K君もさりげなく、すごろく版に目をやったままで答えました。

「わざとでなかったんだ。偶然当たったのに叱られたんだ。」
「ウン。」

私は子どもたちの癇に触れるような話をするときには、簡単に答えられるように
Yes か No で答えられる質問で聞くようにしています。
視線を合わせて話させると余計に緊張が高まりますから、何かしながらね。

「でも、目に刺さらなくてよかったよね。」
「ウン。ウン。」

「そうか、お友達をケガさせるような人になりたいと思っているわけではないんだ。
 先生、ホッとして涙が出そう。」

K君は私のほうをチラと見て、泣きそうな顔になりました。


すごろくが終わって、私は鉛筆の持ち方を教えました。

「鉛筆は棒を持つように持ってはいけないよ。
 とがったほうの近くを親指と人差し指でつまんで中指を添える。」
「そうそう上手、鉛筆を手にするときは必ずこの持ち方、
 後で持ち替えようとしないで始めからね。そしたら人をケガさせることもない。」


私はその他にも人にハサミを渡すときの向きや
机上に物を置くとき大きな音を立てたらいけないことや、
落ちないように場所を考えることなどを、教えました。
当たり前にできるようになるまで、徹底的にね。


お遊戯会には参加したいのか、参加したくないのか、
お遊戯会の練習を邪魔したいのか、邪魔したいと思っているわけではないのか、
小学校入学までに名前を書けるようになりたいかなりたくないか、

私はことあるごとに、K君にこうありたいと思う自分の姿について
自己決定を求め、その決定がうまくいくように援助しました。


『 K君の中に(なりたい自分)の姿を明確にする作戦 』の開始です。


当初の目的であった発音の練習も少しずつ取り組めるようになってきましたが、
何分、注意が非常に短く、先生が言い終わってから言ってねと言っている間に、
他の物に目が行ったりします。

児童精神科の医師とも相談し、注意力を上げるための薬も処方してもらうことにしました。
その薬を飲むか飲まないかについても自己決定してもらいました。


そうしながら、K君は徐々に落ち着きトラブルの回数も減っていきました。


でも、安心するにはまだ早い。



小学校には薬だけではどうにもならない大きなストレスがK君を待ち受けていました。





          ・・・また、続きです。ごめんなさい・・・


『なりたい自分になる』ということ・3

kage

2016/11/01 (Tue)

前々回からの続きです。

多動・衝動性と注意集中力の障害、すなわちAD/HD(注意欠陥多動性障害)が、
反抗挑戦性障害に移行しようとしていたK君のお話です。

担当した日に大暴れしてくれたので、私はしっかりと自分の方針を固めました。
『絶対に叱らないぞ作戦』に加えて『一緒に遊ぶと楽しいぞ作戦』の開始です。

今のままでは発音の訓練どころではありません。
また、人といい関係を保とうと思わなければ、いくら上手に話せても意味がないと思うからです。

K君は、機嫌のいい日は待合室で、大きな声で一方的に周りの人たちに自分の好きなトミカの
話などをしていて、彼が来院していることをほかの場所からもすぐに察することができました。

そんな日は訓練室でも上機嫌で遊びます。遊ぶといっても人と遊んだ経験がほとんどないK君。
家族もテレビを見せるばかりで、ほとんど遊んでやることがなく、
園でもルールを守れないのでなかなか遊びの輪に入れないのです。

ただ、持参のトミカを並べたり、車種のことをいろいろとまくしたてるだけです。
私がいろいろな遊びに誘っても、協力したり、競ったりする遊びは全く興味を示さず、、、、

こうなったら仕方がない、

子どものご機嫌をとったり迎合したりするのは好きではありませんが、
とにかく仲良くなるのが先決です。
「どうしてそんなに車の種類を覚えられるの?」
とちょっと驚いた表情で聞いてみました。

「え~っ? だって簡単だよ。ほらこれは○○年式のトヨタクラウン、こっちは何年式と思う?」
「クラウンということはわかるけど何年式なんてのは全然わからないわ。K君、わかるの?」
「簡単、△△年式だよ。じゃあ、これならわかるでしょ、この前説明したんだから。」
「イヤ~ッ、(それ初めて見たし)全然わからない。」
「ダメだなー!」

得意げなK君は回数を追うごとにたくさんのトミカを手提げ袋にいっぱい持ってくるようになり、
彼の車談義は炸裂しました。

それでは、機嫌の悪い日、つまり園でトラブルがあった日は、どうでしょう。
「ワア~」と大声を上げながら訓練室に一目散に駆け込み、そして、物を投げる投げる、

私はもう止めようとはしません。だって、『絶対に叱らないぞ作戦』中なのですから。

私は、K君にこれも投げてとティシュの箱を差し出しました。
K君はハッとして私を一瞬見ましたが、すぐに箱を奪い取って勢いよく叩きつけました。
パーンといい音が出ました。

つぎは用意していた『レゴ』のバケツ。バケツごとは渡しませんよ。一回で終わっちゃうからね。
レゴを一掴みずつね、何回もバラバラと音を立てて散らばりました。

私は、後ろ手で、壊れそうなものや片付けが厄介そうなものは棚の高いところに置き、
プラスチックの玩具や、絵カードの束などを、

「そうか、そうか、そんなに嫌なことがあったんだ、これもなげなよ。」
なんていいながら渡しました。

ひとしきり投げ終えて、K君の勢いが治まってきたところで私は何もなかったように言いました。
「そろそろ時間だから、片付けようかな~。先生頑張るから、待ってて。
きれいになったら終わりの挨拶をしようね。」

そんなことが数回あったでしょうか?
嫌なことがあって、部屋に駆け込んできても、暴れる程度も頻度も比べものにならないほど減じ、
「ママに聞いて!」というようになりました。

失敗したことを私に知られるのがあんなに嫌だったのに、自分自身で話すことは無理でも
私に知ってほしいと思うようになったのです。

遊びも、すごろくやトランプなど、一緒に遊ぶ楽しさが少しずつわかるようになったようです。
勝つために勝手なルール変更は頻繁で、少しでも形勢が不利になると顔色が変わったり、
途中でやめたりはあるのですが、、、、(笑)

そして帰り際は、クリニックの出口まで見送る私に「先生大好き」と言って抱き着き、
それから帰りの挨拶をするようになりました。


『絶対に叱らないぞ作戦』と『一緒に遊ぶと楽しいぞ作戦』は大成功!

「先生もK君大好きだよ!」
と、自分自身、確信を持てた時に私は次の方針を定めました。

『K君の中に(なりたい自分)の姿を明確にする作戦』 です。     



                               ・・・・つづく・・・・