FC2ブログ
2018 02 « 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31. »  2018 04

✿  リュウくん、卒園おめでとう ✿

kage

2018/03/25 (Sun)

今日は、 リュウくんの卒園式の日です。

私は参加することはできませんが、リュウくん、眼を伏せながら緊張した足取りでステージに
上がり、卒園証書を園長先生から渡されて、そして振り返ったときには、恥ずかしそうでは
あるけれど晴れやかな表情になって壇から下りてくる姿が目に浮かぶようです。

リュウくんにはじめて会ったのは2歳半を過ぎたころ、

お父さんのご実家がある町への転居が決まったときに、お父さんのお兄さんから、

「ずっと言えなかったけれども・・・リュウくんは、自閉症だと思う。
でも、せっかく帰ってくるのなら隣の町に、rainwoman という言語聴覚士がいるから
診てもらうといいよ。」

と助言されたということで私の勤め先の診療所を訪ねてこられました。

リュウくんは、名前の力強い響きのイメージとは裏腹で、色白で小さくて弱々しくみえる
男の子でした。父母と診察室に入り、医師が話しかけたとたんに、金切り声を上げて
泣き叫び、診察不能ということで私が対応役として呼ばれました。

待合室に戻り、泣き止んでいたリュウくんですが、私がご両親と話していてもこちらに視線を
向けることなく、でも、「リュウくん」と声をかけると途端に怯えて、お母さんの陰に隠れました。

ことばが出ないことと、思いが通じないので叫んだりお母さんを激しく叩くことがある
ということでした。

また、自分の頭を床にたたきつけることもあるとのこと・・・

顔面の筋肉が極端に少なく顎も小さくて、しっかり食べたり、話したり、笑ったりの経験が
少ない子どもさんだと即座に思いました。

「申し訳ありませんが、今日はご予約なしで来院されているのであまり時間が取れません。
訓練ご希望とのこと、予約の名簿に、名前を入れておきますね。
少し、この場所になれてから、詳しい診察や検査を実施しましょう。」

「それから、リュウくんにテレビをかなり見せていますね。」

「はい。見せておくと静かにしていてくれますから・・・」とお母さん。

「テレビは見せないでください。スマホやタブレットも、
とにかく画面を見せないようにして下さい。」

実際にはもっとやんわりと、お母さんの表情を見ながら言葉を選びつつお伝えしました。
お母さんは、しばらくの間、ポカンとした顔をされて、
そしてきっぱりと、

「テレビはよくないのですね。わかりました。頑張ります。」と言い残して帰られました。



それから数か月後リュウくんは3歳になろうとしていました。
訓練室に入って、リュウくんを膝に乗せたまま、お母さんはすぐに話し出されました。

「あれからテレビは一切見せていません。」

その言葉に私の方が少し驚きました。
だって、一回や二回の指導でそこまでやってくれるお母さんはまずいないのです。
テレビを見ないのは不可能と思っておられる方がほとんどです。
私を推薦してくださったお義兄さんをよほど信頼されているのでしょう。

「それでリュウくんに何か変化がありましたか?」

「とっても。」とお母さん。

「まず、叫ぶことがほとんど無くなり、私を叩いたり、自傷行為も無くなりました。
ある程度の時間、おもちゃで一緒に遊ぶことができるし、公園でブランコや滑り台
も楽しむようになりました。ただ、知らない人から声をかけられると怯えて、
叫びはしないのですが、泣きそうになったりします。」

「ことばは出るようになりましたか?」

「いいえ。でも、以前は泣き声と叫び声以外は出しませんでしたが、
この頃は何か伝えたいような感じで『アッ、アッ、アッ、』と声を出すようになりました。」

「それから、引っ越し前に療育センターで診てもらい、重度の知的障害を伴う自閉症と
言われました。そこで紹介状をもらって、こっちでも療育センターに行ったのですが、
診断は同じで、療育センターへ母子通園することになりました。
4月からは別の通園施設への入園を進められています。」

お母さんへの問診の間、私はリュウくんには視線を送らず、私に対する構えを作らせない
ようにしていました。

「それでは引き続きテレビ無しで、頑張ってください。来週同じ時間でお待ちしますね。」


リュウくん、確かに、自閉症の特性を持っているのだけれども、なんかしっくり来ないな~

対人的な緊張の強いリュウくんとどうやって仲良くなろうか・・・
と考えながら1週間が過ぎました。


                                    ―  続 く  ー