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リュウくんのこと ( 4回目 )

kage

2018/05/13 (Sun)

さて、重度の知的障害を伴う自閉症スペクトラムと診断されていたリュウくんですが、

お母さんが部屋の外に出ても落ち着いて座って遊んだり、
私が持っているものが欲しいときには私の顔を見ながら掌を差し出したり、
自分が触りたい玩具を指差しで教えてくれたり、

と、できることが増えていきました。

また、前回記事で書いたように、お母さんがことばを教えようとするのをやめて下さってからは
相手が言うのを、真似して声を出そうとするようになってきました。

「しまうま」は[マンマ―]
「うま」は「・マー」
「らいおん」は[アーオン]
「さる」は[ウー]

というように・・・


でも、なんか違う、幼い子の未熟な構音とは明らかに違う・・・・

そうです。

子音が無いのです。
リュウくんの発語には[m]以外の子音が無いのです。
母音も舌を後方に引いたような音で、自然の発達の中で出てくる構音とは明らかに異なります。

私たち言語聴覚士は、幼い子の未熟な構音には何の治療も施しません。
年齢とともに自然と構音は発達していくし、
幼すぎる子の構音の練習がいかにおおきな弊害があるものかを
私たちは誰よりも知っているからです。

口腔内の異常が無いのに、4歳ぐらいになっても上手に音を作れないとき
それは『機能性構音障害』と診断され、治療の対象となっていきます。

さて、リュウくんは
未熟構音ではなく、でも口腔内には何の異常もなく、
かといって機能性構音障害の訓練をする年齢でもなく
でも本人はことばを上手に言えるようになりたくて声を出す練習をしたがる
何とかしてあげたいな~


そんなある日、いつものファミレスでコーヒーを飲んでいるとき、ふと隣の席を見ると、
声を出す赤ちゃんに一生懸命お返事するおばあちゃん。

[ア~ア~] 「はあい、ばあばって呼んだの?」 赤ちゃんにっこり。
[ア~ア~] 「はあい」    [ア~ア~] 「はあい」

今度は赤ちゃん、ちょっとよだれを飛ばしながら[ブッブッブッー]
おばあちゃんも真似して「ブッブッブッー」
赤ちゃんは、とびっきりの笑顔を見せました。

これだこれだ、リュウくんには喃語(なんご)が無かったんだ!

喃語とはしゃべりだす前の赤ちゃんがいろいろな声を出しておしゃべりの練習をすることです。
それに大人が返事をすることでコミュニケーションの練習にもなります。

テレビの前に置かれたリュウくんは喃語を出すことも少なく、たまに出していたとしても
お母さんは気が付かなかったかもしれません。


それからしばらくは私はリュウくんと音遊びに興じました。

ティッシュペーパーを[ふーっ]と吹いたり、
ほっぺをぷうっと膨らませておいて両の手でポンと叩いて[ブッ]と音を出したり、
ベロを唇の上に出して左右に動かし[レロレロ]したり
[アー]と言いながら口を掌でたたいて音を途切れさせたり、

動物の鳴き声をまねたり、乗り物の音をまねたり、

お母さんにも時々見てもらい、家でも声をたくさん出しながら遊んでもらうようにお願いしました。
くれぐれもことばの練習をしているという意識を持たないように念を押しながら・・・


高くない声で、力みの入っていない声で・・・・自然に、自然に、
興奮させないように穏やかに・・・・

                                


   ―  続   く  ―