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どうしてテレビを見せないでというようになったのか(その2)

kage

2018/10/18 (Thu)

前回からの続きです。

20年も前の話、

ことばの相談に見えた不思議な2歳8か月の男の子、
ニコニコしていて一見何の問題も見当たらないのに、突然高い声で叫ぶ、走り回る、
そして、無言語

私は、お母さんに思わず 「テレビをゼロにしてみましょうか。」 といったものの、
次の相談までの1カ月間、お母さん大丈夫かな、大変な思いをしていないかな、
それともやっぱり見せちゃったかな、と、ずっと気になっていました。

果たして1カ月後の再相談の日、
親子はニコニコして部屋に入ってこられました。

  「先生、しゃべりだしました。テレビをやめたら途端に。パパ、ママ、ネエネとか。
   チョウダイとかバイバイもいうし、絵本を見ながらワンワンとかニャーとかいいます。」

私はそうなるだろうとは思っていたもののやっぱりびっくりしていて、
   
  「そう、それはよかった。でもテレビをつけないで生活をするのは大変ではなかったですか?」

と尋ねました。

  「はじめの日はリモコンを持ってきたり、テレビの前でウロウロしたりしていましたが、
   リモコンを隠して、3日目ぐらいからはテレビのことはすっかり忘れた様でした。」

  「それはよかった。」

  「それから、叫んだり、走り回ったりもピッタリなくなりました。 マンションなので下の階の
   方に迷惑かと思って静かにさせるためにテレビを見せていたのですが、逆効果でした。」

私がお母さんとお話している間も落ち着いて担当の保健師とおままごとで遊んでいました。
お皿にリンゴをのせて 『ドウゾ』 とかいいながら・・・

私はお母さんに無理難題を押し付けてしまったのではないかと心配していたので、
お母さんの話にホッと胸をなでおろしましたが、それと同時にテレビが子どもにこんなに
悪さをしていたのだと思い知らされました。

3回目の相談はその3カ月後、ちょうど3歳、2~3語文で話すようになっていました。
診察にもしっかり応じてくれて口腔内や聞こえにも問題が無いことを確認しました。

お母さんは、子育てが本当に楽しいとますますニコニコされていました。

そして、4回目は3歳と6カ月のとき、テレビの視聴はないままです。
言語発達は、ほぼ正常範囲、理解語彙も十分です。
発信と受信のバランス、語用、発声や構音、注意維持力にも異常が無いことを確認し、
この子の相談を終了しました。

その後も、これはと思われるお子さんにはテレビの視聴についてのアドバイスを
するようにしました。そしてその効果の大きさに改めて驚かされました。

そんな時、米国小児科学会より衝撃の提言(1999年10月)がなされました。

2歳までの子どもにはテレビを見せるなというものです。

やっと見つけました。お母さんたちに説明するための根拠を。
まだ、しっかりとした科学的な証拠に基づいてというほどのものではなかったのですが、
テレビがよくないというのが私や一握りの人間の勝手な考えではないといえるようになったのです。

(米国小児学会ホームページ: 10年以上経過した記事は削除されていますので、
 2011年11月の POLICY STATEMENNT でご確認ください。


それから4年以上も経っていましたが、2004年には日本小児科医会も
子どもとメディアの問題に対する提言を出しました。

日本小児科医会ホームページ


                             ― 続  く ―


どうしてテレビを見せないでというようになったのか

kage

2018/10/07 (Sun)

お伝えしたいことが山ほどあって、整理がつかなくなってしまうので、
時間の流れとともにお話してみたいと思います。

以前書いたことと重なることもあるかもしれませんが、私がどうして信念をもって
子どもにテレビを見せるのがよくないと思うようになったのか、
少し長くなるとは思いますが、子どもさんのことでお悩みがある方はお付き合いください。

もう20年以上も前、私は今の職場に入職し、何年かぶりに小児の分野の仕事に戻りました。
同時に、保健所でのことばの発達相談の担当をすることになりました。

立ち上げたばかりの相談事業で、そのシステムをどう構築していくか、対象者をどのような年齢や
疾病にしていくのか、連携先をどうするか・・・まだまだそんなことで頭が一杯になっていました。

そんなある日、あるお母さんから質問を受けました。

   「先生、テレビは子どもに見せてはいけないのですか?」
   「見せすぎはいけないでしょうね。特に小さい子どもさんには。目も悪くなるし
  、発達のための活動時間も奪われるし、
   親子のスキンシップの時間も少なくなれば、情緒にも影響します。」

   「テレビを見せると自閉症になるって言われました。」
   「えっ、誰がそんなことをいったのですか?」

   「自閉症は生まれながらの障害なのですよ。ただ、テレビは見せすぎないようにね。」

当時は自閉症が生まれながらの生物学的な特性であるという考えがやっと日本中、
廿浦浦(つづうらうら)まで広まったところで

親がテレビの見せすぎだなどと責められることがやっと無くなったころです。
そんなことをいう人は専門家としては失格であると思われるようになっていました。

子どもの障害のことを親や環境のせいだというのはとても危険な考えだと私も思い込んでいました。

勉強をしているはずの人がそんなことを言うなんて・・・
心の中のさざ波を隠して、私はそのお母さんに続けました。

   「いずれにしても3歳の子どもさんにはせいぜい30分の番組一つぐらいにして、
    子どもさんに関わる時間を少し増やしましょうね。」

ところが、その相談事業が軌道に乗るにつれ、
子どもたちの様子が以前とはずいぶん変わってきていることに気が付きました。

ことばの発達が遅れている子どもの数がとても増えていること
しかもその子どもたちが情緒的な問題や多動性、衝動性等、行動の問題も合併していること

身辺自立が遅れ、何も自分ではできない子どもがいる

視線が合わない、人と関わることが難しい等の社会性の問題を持つ子どもも多いこと

ある程度の年齢になって、発音や吃音での相談で他には問題が無い
と親はいっていても、とにかく落ち着きのない子どもたち


この数年間で、どうしてこんな変化が生じたのだろう、
子どもの発達の問題や特性が生まれながらのものだというのであれば
こんな大きな変化が一気に起こるわけがない

確かに親の子育て力が落ちているようにも思えるけれど、それだけではないはず、

そう思って私は相談に来られるお母さんたちに事細かに生活の様子を聞くようにしました。


それは驚きの連続、

  起きる時間、寝る時間、食事やおやつの時間が決まっていない
  どんなに子どもが疲れていても、夜、寝ないのが困るから昼寝はさせない
  のどが乾いたらいつでもジュースを飲ませている、麦茶や水は飲んでくれないから
  欲しがればお菓子を与え、そしてご飯を食べてくれないと嘆くお母さん
  逆におやつも与えず野菜ばかり食べさせようとしているお母さんも
  玩具はボタンを押せば音や光が出るものや、電車や車ばかり、
  しかも与えているだけで一緒に遊ぶことはない、
  一日中、テレビが付いている家、等々・・・


私はその子を取り巻く環境の中で一番発達の妨げと思われることについて
一つ一つ具体的に改善案をアドバイスをするようにしました。

生活習慣のこと、食事のこと、遊び方、声のかけ方、癇癪への対応、等等・・・

数か月空けての再相談で少しずつ状態が変わり、心配が少なくなる子どもさんもいましたが、
すっきりしない子どもさんはことばの訓練や療育訓練に導入しました。

そんなある日、とても不思議に思える子どもさんが相談に見えました。
2歳8か月、ニコニコしているのに急に叫ぶ、走り回る、そして無言語。

一見して、大きな障害があるようにも見えず、お母さんにいくら聞いても生活上、
大きな問題点はありません。
録画したアニメをずっと見せていること以外は・・・

以前、テレビで自閉症になるのかと質問されたことを思い出して、私は思わず、

   「画面を見せるのをゼロにしてみましょうか。」と言ってしまいました。

   「ゼロですか?」

私は極端なことを言ってしまったという気持ちもありましたが「できれば」と答えました。

私は、テレビを消すことで、お母さんが苦しい思いをすることなるかもしれないと思い、
通常は3~6か月後の再相談を1月後に予定しました。

            

                             ―   続   く  ―