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リュウくんのこと ( 完結編 )

kage

2018/07/03 (Tue)

最近は文章を練る暇がなく、思ったままに書いて、長文になっています。

さて今日は終わることができるかな?リュウくんの話。

3歳半になろうとする春、リュウくんは幼稚園に入園。
普通の幼稚園をご両親が選ばれたことに、私は驚きを隠しえなかったのですが、
リュウくんは意外と平気で、というよりも喜んで幼稚園に通い始めました。

今時、英語や体操の教室などもなく、行事ごとも派手ではない幼稚園はいつも定員割れらしく
他の園では入園を断られてしまうかもしれないリュウくんを快く受け入れて下さいました。

箸の使い方やらトイレットトレーニングといった身辺自立から、丁寧に指導してもらい、
激しかった偏食も先生方の導きで少しずつ改善しました。

歌やお遊戯も覚え、仲の良いお友だちの名前も教えてくれるようになりました。

1年経つ頃には小さくて弱々しかったリュウくんが、日焼けし、逞しくしっかりした体形になって、
まだ、年齢相応の長い文は表出できませんが、質問に答える形では十分な会話ができました。


もちろんなんでもスムーズというわけにはいきません。
対人恐怖を持つリュウくんは行事が苦手で、1年目は参観日や運動会、お遊戯会のたびに、
始まる前から、多くの人がいるというだけで、泣き出してしまいます。

私は、無理やり参加させないようにとアドバイスしました。

 「今から何が起ころうとしているのか、先生のことばだけでは理解できないのです。」

お母さんはリュウくんを抱き、会場の隅で見学させることにし、
年中さんになるころには月に一回の参観日はもう平気、席に座っていつも通りの様子をお母さんに
見せることができるようになり、10月の運動会へ向けての練習にも一生懸命取り組んでいるとの話、

それを聞いたおじいちゃんは大喜び、運動会に参加出来たら玩具を買ってあげるといったそうです。

(イヤイヤ、リュウくんはご褒美なんてなくても運動会に出たくてたまらないのですよ。)

私はお母さんに用意してもらった前年の運動会の写真をリュウくんに見せながら、

 「リュウくん、運動会出るの?」「ウンドウカイ、デル!」
 「でもさあ、こんなに人が来るんだよ。知らない人もいっぱいだよ。」「イッパイ・・・」

と言ってリュウくんは両手をグッと握りしめました。
(出たいけれど、ドキドキするんだよね・・・)

 「お母さん、練習が上手にできても、本番では先生が付いて下さるようお願いしてください。」

運動会当日、リュウくんは、先生に手を引かれて入場し、
始めの体操の時は泣きそうな顔でしばらく空を見上げ、その後は下を向いたまま、
でも定位置から離れることなく、かけっこは先生に抱っこされて参加、
ダンスの時も先生が一緒に動いてくれて、なんとか自分の場所に立っていることができました。

12月の発表会の時も、舞台の隅のカーテンに隠れた場所で顔を背けながらも
その場所から離れなかったそうです。   少し残念そうにするお母さんに私は
 
 「去年に比べたら大きな進歩でないですか?来年はきっと大丈夫。」

そして年長組になったリュウくん、
エコラリア(オウム返し)もほぼ消失、お友だちとの遊びのこと、お母さんが作る料理のこと、
お父さんとのお出かけのこと、いろいろ話してくれるようになりました。

いよいよ秋の運動会、
例によって写真を見ながら「リュウくん出るの?」「デルヨ」の会話の後、私は続けました。

 「人がいっぱいいるからね、出てもドキドキして何にもできないかもね。」「デキル!」
 「でも、前もできなかったし・・・」 と言いかけた時、リュウくん、思わず大きな声で
 「デキル~!」と叫んでしまいました。そして目にはいっぱいの涙、

でも、立ち上がることもせず、お母さんに助けを求めるわけでもなく、
歯を食いしばって私をにらみつけています。

リュウくん、私と喧嘩しているんだ!

自分の思いが何なのかさえもはっきりしない混沌の中にいたリュウくんとは大違い、
怯えたり叫んだりするだけで、何も伝えることができなかったリュウくんが・・・
3年の間にこんなに成長して、自分の決意を必死で伝えています。

運動会当日はどこにいるのかさえ分からないほどリュウくんは完璧に参加し、
終わったときの晴れ晴れとした表情を見てご両親もおじいちゃんも涙が止まらなかったそうです。

お遊戯会では年長さんは劇をしますが、王様の役に立候補し、セリフもちゃんと言えたそうです。


私のところの訓練が始まる前にリュウくんは重度の知的障害を伴う自閉症と
診断されていましたが、年長の春の知能検査では正常範囲と判定されていました。
ひらがなの読み書きや数の理解も進み、集団行動も立派に取れます。

しかし、例えばなぞなぞなどは苦手だし、ことばの裏の意味はまだ理解しにくいし、
先生の指示が長いと理解できないで他児の行動を見ながら動くということです。

そんなことも考慮してご両親は入学先として公立小学校の特別支援学級を選ばれました。
私は例によってノーコメントでしたが、内心はよい選択をされたなと思いました。

訓練最後の日はご両親が付き添って見えました。

 「リュウくん、学校楽しみ?」「ウン、タノシミ。ボクネ、イッパイベンキョウスル。」
 「そう、でも、勉強、いやって泣くかもね。」
 「ナカナイヨ、モウ、rainwoman センセイ、イジワル~」

私はご両親に今後のことを説明した後、お礼を言いました。

 「長いこと来ていただき、本当に感謝しています。」
 「いやっ、お礼を言うのは私どもの方で、先生、なんでそんなことをおっしゃるんですか?」

 「私は無理難題いっぱいお母さんに投げかけましたが、私のことを信じてくださいました。
  子どものために自分たちの生活を変えることはできないとおっしゃる方も多くて、
  最近、少しまいっていました。でもリュウくんとご両親のおかげで、
  自分の信念は間違っていなかったと、勇気を持って臨床に向かおうと
  新たなファイトがわいてきました。本当にありがとうございました。」


                                        ― 完 ―

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kage

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Posted at 11:03:49 2018/07/09 by

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kage

Re: はじめまして 鍵付きコメントさんへ

ご訪問とコメントありがとうございます。
息子さんはいい方に向かわれているとのこと何よりです。

お母さんとして反省されていることもあるとのこと、
反省できるお母さんはリュウくんのお母さんと同じで、素晴らしい。
すべてを子どもさんのせいにされる方も多くて、悲しいこともあります。

私のところからは遠いところにおられて、一度診せてくださいなどということもできないし
近辺の信頼置ける言語聴覚士を紹介することもできません。
申し訳ないです。

異常発声や異常構音は3歳ぐらいではなかなか治療の対象とはされません。

原因としてはリュウくんのようにメディア漬けの生活、英語などの教育メディアも含みます。
それから養育者の教え込み、
ことばは教えるものではなくて投げかけたり受け取ったりするものなのです。

まれに扁桃肥大やアデノイドの肥大、鼻咽腔閉鎖不全などの口腔内異常も原因になることがあります。
先に書いたメディアや教え込みをやめてもよくならなければ、半年後ぐらいに小児を専門とする
耳鼻科(言語聴覚士もいるところ)で診てもらうとよいと思います。

なかなか更新できないブログですが、少しでもお役に立てればと思います。

子どもさんが笑顔で過ごせますように。

Posted at 12:16:32 2018/07/10 by rainwoman

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kage

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Posted at 20:41:01 2018/07/11 by

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kage

Re: : 鍵付きコメントさんへ

人生で一番苦しいけれど一番幸せなこと、それが子育てだと思っています。
良いお知らせを待っていますね。

なかなか更新できませんが時々は覗いてみてください。

Posted at 08:44:34 2018/07/24 by rainwoman

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kage


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