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どうしてテレビを見せないでというようになったのか 4

kage

2019/03/17 (Sun)

久しぶりに小児を対象とする仕事に戻った私は、この分野の最先端を知りたいと思い
頑張って2~3年は研修会などに参加しましたが、
発達障害というものが世の中から注目されているにもかかわらず内容はいまいち、

もう自分で勉強するしかないなという気分になってきました。

① 自閉症をはじめとする発達障害の原因と障害機序について深く理解したい
  そしてそれを治療に活かしたい

② 小さい子ども達に対するテレビ等、メディアの影響についてきちんと説明できるようになりたい

というのが私の勉強の目的


1990年代に開発、利用されるようになったf-MRIという機械
人間が何らかの活動をしている時にどのように脳が働いているのかを画像として見せてくれます。

それまで同じ目的で使用されていたPETやSPECTに比べ、画像の解析度が勝り、
多くの研究機関等で使用されるようになっていきましたが、2000年ごろからは自閉性障害をはじめ
とする発達障害の人たちの脳の使い方の特徴を知ろうとする研究も盛んになっていました。

これは私にとっては渡りに船、

研究対象となったのは比較的認知機能が高く、また、年齢も思春期以降の若い世代の人たちが
多かったのですが、その人たちが使いにくい、あるいはあまり使わない脳の部位と行動や思考の
特性は私が予想していた通り、いやそれ以上にピッタリ一致、

当たり前といえば当たり前だけれども、

やっぱりそうなんだ、

生まれながらに何かが違うなどと呑気なことを言っているだけでは治療に結び付くはずがない。

子どもや親に寄り添うのは当たり前、
きちんとした治療の方略を持たなければ、医療でやる意味が無いのです。


私はこの職場に来る前は成人の脳損傷(頭部外傷や、脳卒中、脳の変性疾患等)の人たちの
ことばや高次脳機能の治療をしていました。

この職場にはf-MRIはないけれど症状を見ればどの部位の発達が未成熟かがおよそわかります。
脳のどこの機能が不十分でどこは比較的良好に機能しているのか、、、

小児の治療を考えるときにも脳損傷例の治療と同じように考えればいいんだ、、、
こんなシンプルなことにやっと合点がいって、なんか仕事がとても楽しくなって、


でも脳損傷の治療と発達障害の治療、忘れてはならない違いがある、

大人は一度獲得した機能が使えない、使った経験の記憶はあるし(例えば病前は普通に話して
いた)健康な部分の脳の機能は十分にある(例えば、話せないけれども漢字は書ける)、

しかし小児はまだその機能を使ったことが無い、
それを使うことがどのようなことなのかわかりづらいし、
比較的正常に育っている脳の部位もまだまだ未熟。

しかし、損傷を受けた脳の部位はその機能を取り戻すことはないが、
小児の脳は発達が不全なだけで生きている。問題の部位も発達を取り戻す可能性がある。


こんなことを考えながら、それまで難しさを感じていたことばを未獲得の子どもや、
質問されるとどうしてもエコラリア(オウム返し)で応答してしまう子どもの治療プログラムを
作り、手ごたえが徐々に大きくなるのを感じるようになっていきました。

私が小児の世界に戻って10年経とうとするころには発達障害を持つ人たちの脳の機能に
ついてのReview(総論)も出されるようになり( 例、Bachevalier and Loveland, The orbitofrontal-amygdala circuit and self-regulation or social-emotional behavior in autism, Neuroscience & Biobehavioral Reviews, Vol.30, 2006 ) 


私もどんなに重度の子どもさんが来ても、問題行動の多い子どもさんが来ても何かできるはず
という覚悟と自信みたいなものができてきました。



しかしながら脳機能発達のアンバランスさのおおもとの原因についてははっきりしないまま・・・

ゲノム研究が盛んになる中で、自閉症の遺伝しが見つかったとかのニュースも何度か耳に
しましたが、決定打とはならず

予防注射の中の微量の水銀が原因と騒がれ水銀が取り除かれても自閉症の発生率は変わらず、

結局、『生まれながらの特性』という神話のような言葉が世の中の主流で、
それに疑問を投げかけることさえもタブー視され続けました。


私は同業の人たちとは付かず離れず、研修や学会に積極的に参加するよりも自分でいろいろな
論文を探しながら自分がしていることの裏付けをしたり、新たな発想を得たりしながらそれからの
数年間は対外的には静かに、でも、自分の臨床は楽しく、続けていました。

それから、テレビのことは、それも対外的には静かに、臨床場面ではそれなりの手ごたえを
感じながら視聴時間の制限が大切なことを話しました。



ある日、書斎の向かいのパソコンをいじっている夫が

「rainwomanが読みたそうなものを見つけたよ。」
と言いながら、一本の論文をプリントアウトしてくれました。


それはまさに自閉症の数『 Autism counts 』というもので、最高峰の科学雑誌『NATURE』の
電子版に掲載されたものでした。
(Karen Weintraus, Autism counts, Nature, vol. 1.479 3 November 2011)


時々役に立つインドア夫(オット)です。

その論文の内容についてはまた次回。
この忙しい世の中で、相変わらずスローな私をお許しください。

                

                                  ― 続  く ―






この記事へのコメント

kage

おはようございます。

お忙しい中での更新ありがとうございます。

確かタメットさんの本で、「脳のある部位に刺激を与えると、自閉症と同じような感覚を再現できる」実験が出てた気がします。また交通事故や脳の病気によって、発達障害とにた症状になるという事は、やはり生まれつき決まってるだけでなく、環境に影響されてる証拠ですね。

Nature誌の記事も楽しみです。

Posted at 08:34:45 2019/03/18 by yuccalina

この記事へのコメント

kage

yuccalinaさんへ

yuccalinaさん、

いつもありがとうございます。
返事が遅くなって申し訳ありません。

タメットさんの本は取り寄せたのですが、なかなか読む時間を取ることができず
なぜか私より忙しいはずの夫が、(かなり私より勉強好き)
食事の後とかにちょこちょこ読み、面白い面白いと断片を私に伝えてくれています。

脳は固定的なものではなく、生まれる前からずっと発達を続け、そして年を取ると
萎縮や変性などが起こってきます。

どのような育ちや生活をしているかで特技も苦手も決まってきますし、認知症のリスクも
かわってきます。もちろんその人の持つ生まれながらの素質も絡みますが。

どうしてこのような当たり前のことに自分が気が付くことができなかったのか、いや
気が付かないように自分を制していたのか、、、

もうすぐ(といっても何週間がかかるかもしれないけれど)NATUREのことで更新します。

Posted at 19:34:47 2019/03/26 by rainwoman

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kage


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