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『なりたい自分になる』ということ・3

kage

2016/11/01 (Tue)

前々回からの続きです。

多動・衝動性と注意集中力の障害、すなわちAD/HD(注意欠陥多動性障害)が、
反抗挑戦性障害に移行しようとしていたK君のお話です。

担当した日に大暴れしてくれたので、私はしっかりと自分の方針を固めました。
『絶対に叱らないぞ作戦』に加えて『一緒に遊ぶと楽しいぞ作戦』の開始です。

今のままでは発音の訓練どころではありません。
また、人といい関係を保とうと思わなければ、いくら上手に話せても意味がないと思うからです。

K君は、機嫌のいい日は待合室で、大きな声で一方的に周りの人たちに自分の好きなトミカの
話などをしていて、彼が来院していることをほかの場所からもすぐに察することができました。

そんな日は訓練室でも上機嫌で遊びます。遊ぶといっても人と遊んだ経験がほとんどないK君。
家族もテレビを見せるばかりで、ほとんど遊んでやることがなく、
園でもルールを守れないのでなかなか遊びの輪に入れないのです。

ただ、持参のトミカを並べたり、車種のことをいろいろとまくしたてるだけです。
私がいろいろな遊びに誘っても、協力したり、競ったりする遊びは全く興味を示さず、、、、

こうなったら仕方がない、

子どものご機嫌をとったり迎合したりするのは好きではありませんが、
とにかく仲良くなるのが先決です。
「どうしてそんなに車の種類を覚えられるの?」
とちょっと驚いた表情で聞いてみました。

「え~っ? だって簡単だよ。ほらこれは○○年式のトヨタクラウン、こっちは何年式と思う?」
「クラウンということはわかるけど何年式なんてのは全然わからないわ。K君、わかるの?」
「簡単、△△年式だよ。じゃあ、これならわかるでしょ、この前説明したんだから。」
「イヤ~ッ、(それ初めて見たし)全然わからない。」
「ダメだなー!」

得意げなK君は回数を追うごとにたくさんのトミカを手提げ袋にいっぱい持ってくるようになり、
彼の車談義は炸裂しました。

それでは、機嫌の悪い日、つまり園でトラブルがあった日は、どうでしょう。
「ワア~」と大声を上げながら訓練室に一目散に駆け込み、そして、物を投げる投げる、

私はもう止めようとはしません。だって、『絶対に叱らないぞ作戦』中なのですから。

私は、K君にこれも投げてとティシュの箱を差し出しました。
K君はハッとして私を一瞬見ましたが、すぐに箱を奪い取って勢いよく叩きつけました。
パーンといい音が出ました。

つぎは用意していた『レゴ』のバケツ。バケツごとは渡しませんよ。一回で終わっちゃうからね。
レゴを一掴みずつね、何回もバラバラと音を立てて散らばりました。

私は、後ろ手で、壊れそうなものや片付けが厄介そうなものは棚の高いところに置き、
プラスチックの玩具や、絵カードの束などを、

「そうか、そうか、そんなに嫌なことがあったんだ、これもなげなよ。」
なんていいながら渡しました。

ひとしきり投げ終えて、K君の勢いが治まってきたところで私は何もなかったように言いました。
「そろそろ時間だから、片付けようかな~。先生頑張るから、待ってて。
きれいになったら終わりの挨拶をしようね。」

そんなことが数回あったでしょうか?
嫌なことがあって、部屋に駆け込んできても、暴れる程度も頻度も比べものにならないほど減じ、
「ママに聞いて!」というようになりました。

失敗したことを私に知られるのがあんなに嫌だったのに、自分自身で話すことは無理でも
私に知ってほしいと思うようになったのです。

遊びも、すごろくやトランプなど、一緒に遊ぶ楽しさが少しずつわかるようになったようです。
勝つために勝手なルール変更は頻繁で、少しでも形勢が不利になると顔色が変わったり、
途中でやめたりはあるのですが、、、、(笑)

そして帰り際は、クリニックの出口まで見送る私に「先生大好き」と言って抱き着き、
それから帰りの挨拶をするようになりました。


『絶対に叱らないぞ作戦』と『一緒に遊ぶと楽しいぞ作戦』は大成功!

「先生もK君大好きだよ!」
と、自分自身、確信を持てた時に私は次の方針を定めました。

『K君の中に(なりたい自分)の姿を明確にする作戦』 です。     



                               ・・・・つづく・・・・

この記事へのコメント

kage

こんにちは。

息子が療育施設に通っていた3歳ごろ、臨床心理士さんから言われたのが、

「褒め捲くって気持ちを乗せてあげてください」

だったのを思い出しました。

当時は兎に角、手を使わずにスプーンもバッグも持てない状態でした。今思えば手が過敏で何かに触れるのを恐れていたのですが、心理士さんは、「無理矢理やらせても、気持ちが向いてなかったら意味がない」と言って、「手を添えて一緒に何かやってみて、ちょっとでも手に力が入れられたら、そこで空かさず褒めてあげて下さい」と。

これを繰り返した結果、手を使うようになっただけでなく、息子との信頼関係も築けたような気がします。

Posted at 14:52:37 2016/11/01 by yuccalina

この記事へのコメント

kage

yuccalinaさんへ

yuccalinaさん

こんにちは。
いつもありがとうございます。


自閉症の子どもさんでも、AD/HDの子どもさんでもあるいは発達障害がない方、
大人の患者さんでも、私は自己決定ということをとても大切に考えています。

なりたい自分を見つけてそうなるように前に進むという自己決定。
その時に「今、うまくいっているよ」という feed back というか励ましが必要です。

特に子どもさんが相手だと、頻繁に声をかける必要がありますね。

心理士さんのアドバイスで少しずつ前に進んで行かれた様子が目に見えるようで
うれしかったです。

つづくと書きながら、とぎれとぎれですが、「完」までもうしばらくお付き合いください。

Posted at 16:56:09 2016/11/03 by rainwoman

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kage


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