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なりたい自分になるということ・5

kage

2017/02/05 (Sun)

何か月も前に書き始めた記事にやっと終わりが見えてきたと思っていた矢先、
ちょっとしたミスで、消えてしまい、また書き直しです。

AD/HDと診断され、反抗挑戦性障害に移行しようとしていたK君。
絶対叱らないで、一緒に遊ぶ楽しさを教えて、そして、具体的な場面に応じてなりたい自分の姿を
描かせて、何とか落ち着いて卒園式のシーズンを迎えることができました。

 「卒園式は出るの?」と聞いてみると「でるよ、練習もしているし。」とK君

 「でも本番はたくさんの人が来るよ。偉い人も来て、長い話もするし、退屈だと思うんだ。」
と、私は情報を与え、

 「大きい声を出したくなったらどうするの?」 「う~、あくびすることにする。」

 「なるほど、立ちたくなったら?」
 「前には行かないことにしようかな~。」

私は園の先生に電話をし、式の途中で動きたくなった時に行ってもよい場所を
決めておくようにお願いしました。

こうして卒園式本番は3回ほど背伸びをして大きなあくびをしたそうですが席を立つこともなく
無事終了することができました。

そして入学式もね!

しかし小学校にはまだまだ乗り越えなくてはならない壁が待ち受けていました。

まずは、担任の先生。
K君の特性を踏まえ、ベテランでとても評判の良い、指導力のある女の先生が配置されました。

しかし、その先生は、K君を何とかいい子にしようと必死で、ことあるごとに
K君に言い聞かせ、お母さんにもあれこれ注文を付けてこられました。

先生が正しい方向を示し、それに従わせるという方法は、
どんなに優しい声でも穏やかな態度でもK君には大きなストレスです。

K君はイライラし始めていましたが、彼なりに自分をコントロールしようと努力していました。

そして4月も終わろうとしている日に事件は起きました。

保育園から大好きだったモモちゃんは隣のクラスです。
休み時間にちょっと様子を見に行ってみたら
ほかの男の子がモモちゃんと話しているではありませんか。
カッとなって、その子を思いっきり突き飛ばしたというのです。

小学校ではいい子だと思われたかったのに・・・早くもなりたい自分像が崩れてしまいました。

その後は大パニックで、担任が話そうとしても治まらず、母親に迎えに来てもらったそうです。

その日はちょうど訓練の日で、あらかじめ担任から連絡をもらったので、
私は覚悟を決めることができました。
一年かけて築き上げた私とK君の信頼関係は少々のことでは崩れないという自信がありました。

K君は案の上、大声を張り上げながら訓練室に突入し、さっそく物を投げようとしました。
私は彼の両手首をしっかり掴み、静かに「投げないで。」といいました。

以前は物を投げても決して止めることがなかった私から制止され、K君は一瞬びっくりした顔をし、その後は、

 「バカ~」,「ハナセ~」,「クソババア~」,「死ね~」 等等、

と大声で叫びながら、手を振り解こうと身をくねらせたり、
私のスネをしこたま蹴り続けたりしました。

 「ねえ聞いて・・・」と話そうとしても

 「うっせぇ、ぶっ殺すぞ!」

と私の手に噛みつこうとしたり、でも私は絶対離さないと決めていました。

15分ほどもみ合っていたでしょうか、二人とも汗だくになり、ちょっと彼が静かになったところで
私は切り出しました。

 「君が優しい子だってことは知ってるよ。」・・・・反論はありません。続けることにしました。
 「隣のクラスの子にけがをさせたかもしれないと思ったら耐えられないんでしょ。」

K君はかすかにうなづきました。

 「本当に君は気持ちの優しい子だ。」

と私は言いながらK君の手を放し、椅子に座らせました。

しばらくの沈黙の後、K君は「先生、今日は帰るよ。」と穏やかに言いました。
 「そっか~、じゃあ来週は訓練頑張ろう。」

私は訓練室から出て、お母さんに謝りました。
 「ずっと握っていたので手首が真っ赤です。申し訳ありません。訓練もできませんでした。」

お母さんも平身低頭、
 「あのバカが、先生にいつも迷惑かけて・・・」
以前よりはずっとお母さんらしい姿で、何か暖かいものがふわっと
私の中に入ってきたような気がしました。

K君は何もなかったような顔をして訓練室から出てきて、

 「先生、来週はがんばっからね~、バイバーイ。」といって帰っていきました。

彼を送り出した後、急に足に痛みを感じ、見てみると私のスネはうっ血し、
数日間は腫れが引きませんでしたが、彼のこれまでの心の痛みに比べればなんてことはありません。

君は優しい人になりたいんだ、優しい人と思われている人になりたいんだね。

ずっと応援するよ。  決心を新たにした一日でした。


                      続く・・・次は完結の予定・・・           
                           


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